いつかあの頂へ

bufoの日記

『室内』

bufo2006-03-03

 ハンズへ寄ったあと丸善へ。
柳澤桂子さんの『ふたたびの生』
いつものように『室内』3月号をもとめる。


 帰宅して、ちょっと厚めの『室内』を手にとる、何か特集があるのだろうか。
突然大文字が目に飛び込む、



 と言うわけで 出し抜けですが『室内』は本号をもっていったん休刊いたします。前身の『木工界』から数えて通算615号 半世紀に及ぶ時間を細く長く走ってまいりました。雑誌にも寿命はあります。見事に天寿を全うした大往生とお祝いください。永年にわたるご愛読ありがとうございました。またいつかどこかでお目にかかる日まで   さようなら



 なんと なんと。 思いもかけない文にあ然とする。


 時代が終わる、というのはこういうことだろうか。


「木工界」8号を買ったのは、大学生の頃だ。
そのころ家具、木工に関して、書店に出ているのはこの雑誌だけであった。
誌名のとおり業界紙に近い内容で、広告欄は菊川、平安、兼房といった木工機の写真で埋まっていた。
当時の日本の木工業界のすべてが詰まっていた。


 やがて世間の好景気と、業界の変遷につれて誌名を『室内』と改めて読者層を広げて世のインテリアブームをリードする。
インテリアコーディネーターなる横文字資格ができたとき、私の受験参考書は本誌であった。
本誌の執筆者、読者が、インテリアの世界を作っていたのだ。


 8年ぐらい前だったか、月ごとに家具の有名ブランドを、抽選で愛読者に割安で頒布する企画があった。ある月私が当たった。
その時購めたチェアーが、今座っているモーエンセンの名作、スパニッシュチェアーである。
その時編集部に送ったお礼の一文が、読者欄に掲載されたのも今は楽しい思い出である。


 数年前、一度すべての書物から離れて、雑誌の購読もやめたときがあったが、この『室内』だけはつい手が出てしまう、600冊もつづけて読んだのは、わが生涯にこの本だけだ。


 最近とみに寄る年波を自覚すること多くなったこちとらより、よもや先に大往生を遂げようとは、まったく予想もしなかった。


 工作社はほとんどこの本の出版をつとめとしていたように承知する。
休刊の裏にどんな事情があったか、一読者の知るところではない。
残念だが、ここはさらばと手を振って別れよう。ただ編集部の皆さんのご多幸を祈るや切である。


 そしてもう一度、山本夏彦さんの随筆集を読み返そう。


 ありがとう、山本さん。

 さようなら、『室内』