幻庵
榎本様
本日、緑の列島・名工大近山スクールの生徒の一員として、「幻庵」の見学をさせていただいたものです。
折角の秋の好日の貴重なお時間を、我々のためにおさきいただきましたことを心より御礼申し上げます。
「すごい」「スゴイ」とつぶやきながら熱心に見ている若い人に混じって、門外漢の私も、少なからず興奮して拝見いたしました。
同行の皆さんはいずれも建築のプロ(学者、学生、建築家、大工等々)ですが、私はこれから自分ら夫婦二人の終の棲家を建てようと一夜漬けの勉強を始めた素人ですので、彼らとはおのずから「幻庵」の見方感じ方は違うと思いますが、それでも幻庵の圧倒的な存在感と、なんとも好もしいたたずまいに一瞬、時を忘れました。
そしてそれ以上に、部屋をあたため、遅れてくるわれわれを待っていただいていたお二人のお姿に、強い感銘を受けました。
おいとまするとき、寺川さんの車に同乗させてもらっていたのですが、橋のたもとに立って、最後までお見送りいただいていたおすがたがいまも目に浮かびます。
夕方の寒さの中、お風邪などお召しにならなければいいがと、車中でお案じ申しておりました。
帰って、早速石山さんの本「笑う住宅」を読み直したところです。
なんといい加減な読み方をしていたのかとわれながらあきれます。
そしてつい先ほどお別れしたばかりのご主人のおすがたと、「風のように軽い」足取りでアンナプルナ山麓を巡るエノモトさんが、私の頭の中でなかなかいっしょになりません。
若い日、山登りに夢中になっていたころ「処女峰アンナプルナ」を読んで興奮したことなどもちらと思い出しました。
いつの日か、ヒマラヤへ行けるときが来たら、エノモトさんのように歩きたいと思います。
お二人がいつまでもあの「幻庵」での暮らしを楽しまれますよう、お祈り申し上げつつ、筆を擱きます。
ありがとうございました。