いつかあの頂へ

bufoの日記

膵臓がん

 先月(9月)24日 「第九」コーラス練習場への途次、地下鉄伏見駅を地上に出たとたんなんだか急に空腹感を覚えた。おやなんだ?と思うとたん今度は足がもつれた。
 御園座の顔見世の看板の下に立ち止まって考える。
なんだろう、狭心症のやつ、今日は変化球できよったのか?

 いったん鯱城ホールへ入って仲間に挨拶したが、どうも落ち着かない。
 そのまま外に出て、地下鉄に乗る、東別院で下りて「かねまき医院」へ。


 先生首をひねっていたが「血液検査をして見ましょう」という。
 かわいい看護婦さんに採血してもらってるうちに落ち着いてきた。


 地下鉄で鯱城ホールに戻ると、ちょうど休憩中、後半の一時間練習して帰る。



 今月24日、いつもの薬をいただきに「かねまき医院」へ。
 先生「血糖値が高いですねぇ、168」
   「え? 糖尿病ですか!」
 先生「念のためにお腹のCTをとってみましょう、スイゾウガンなんてことだといけませんからね」
 ???


 この歳になれば、もうそろそろだと ときに思う。
 親の年はとっくに越えた、
 同年代の訃報も珍しくはなくなった。
 人間一度は死ぬもんだ、ということも知っている。


 それにしても
 こうもいっときに病気が出てくると、こんがらかる。
 糖尿病!!
 スイゾウガン???


 自分じゃ、まだ結論が出たわけじゃないんだから、と思おうとするが
 コンピューターに向かうと、マウスが勝手に「糖尿病」を検索している。
 「スイゾウガン」を探している。


 本屋へ入ると、自然に脚が病気の本の前に立つ。
 「がん日記」 中野孝次


  『自分に余命一年と知って以来、まわりのものすべてに対し
  愛しさの増すを覚える。すべてが愛おしく。』


 立ち読みしているうちに涙が出てきた。
買ってしまった。


 べつに自分じゃ、あわてているつもりはないが、
考えてしまう・・・・


 30日にCTの予約をした、
 もし、もしも変な結論が出たらどうするか?


 大きさによって、手術か、薬で行くか?
手術はいつするか?


 兄弟にはいついうか?
友達にはどんな顔でつきあうか?



 さしあたって11月25日の「市民の第九」演奏会には出られるか?
 もしでないとすると、楽しみにしてくれている人たちになんと言うか?


 俺が出ないとがっかりする人もいるだろう!
 錦織 健のことは知らなくて、俺が主役だと思ってきた人はがっかりするだろう!!
 だいいち先週頼んだ記念の舞台写真に、肝心の俺が写らない!


 春になったら行こうと二人で楽しみにしているチベット鉄道はどうするか? 痛み止めで行けるだろうか?


 インターネットでいろいろ読むと、スイゾウガンはまだ治療法がないみたいだ。要するに不治の病だ。


 遺言状はいつ書くか、
 葬式はどうするか?
 俺の遺族年金はいくらなのか?
 よめさんはどうするのか?
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 今日 10月30日、朝 絶飲食。
 NTT病院でCT。11時半終了。会計1万1000円
 担当の女医さんが、挨拶のとき変な顔をしてた、あれはなんだ?


 まだ午前の診察に間に合いそうだ、このあしでフィルムを持って「かねまき医院」へ行こう。
どうせなら結論は早い方がいい!


 
 先生、ピッピッピッと写真を白い壁にはさんでしばらく見ている。
??
 「うーん」
???
 「きれいですねぇ」
????
 「いや、なんにもないです、きれいです」
!?
 「よかったですね」
!!!

 え? あ、ありがとうございます!!!!



 人の命は有限だと知っている。
 あの人や この人や みんな病気で死んでった。
 おれも もうそろそろと思っている。 
 なに いつ来てもいいや、と口ではいっている。


 なのに
 明日かもしれない、といわれたとたん、
 なんでこんなに考えることが多いのだろう。


 残り時間
 1年です、といわれたら、
 ああ! なにを思うだろう。


 とりあえず
 今日は、無罪放免。




 でも、いつか期限切れの日が来る



 運命




 いつだろう。





 

 おやすみ







 またあした