遥かな友に
東京から帰って、家のドアをあけると、電話が鳴った。
「藤井先生がお亡くなりになったの」
bufoがお世話になる『男爵コーラス』の加藤先生からである。
お加減が悪いと聴いてはいたが、思いもかけぬ、訃報であった。
3年前、生涯学習センターに「シニア男声合唱団」の企画を提案し、
以後、指揮の加藤先生と共に、ピアノの前でいつもにこやかに、辛抱強く
われわれを指導してくださった。
『昭和男爵コーラス』の生みの親であり、育ての親でもあった。
先生もわれわれと共に歌うことにある種生きがいをもたれていたことは、
折々のお言葉から察せられた。
休憩のときの雑談で、bufoの持病を心配してくださって、
次の練習日には、研究論文のコピーや、雑誌の切抜きをお持ちくださり
ご自身や知人の闘病体験を熱心にお話しくださった。
お話を聴くうちに感じたのは、先生は、病院や、その医療にあまり信をおいていらっしゃらないらしいことであった。
人生の残りの日々を病院で過ごし、自らの病状を細かに記録して医師に提示しおどろかせたという、義弟の几帳面で我慢強い人生を見てきた目からすれば、
およそまったく反対の信条に生きていられたような気がする。
信念の強い先生であった。
明るい星の夜は 遥かな空に
思い出すのは あなたのこと
おやすみ やすらかに たどれ 夢路
おやすみ たのしく 今宵も また
男声合唱の愛唱曲『遥かな友に』
先生の笑顔を思いながら、こころをこめて歌おう。
合掌
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