あおぞら農園の春
4月23日(水)
春のあおぞら農園へ出発。
リンゴ、なし、うめ、白い花、赤い花。今日の伊那路は花の道。
高遠の街を外れて、枝垂桜の咲く里で、昼食は「七面亭」の蕎麦。
杖突峠から甲州街道へ。
いつもは素どうりの「神田の大糸桜」を訪ねる。
実はこの木、小淵沢の春を告げる早咲きの江戸彼岸桜。
ご覧のとうり花の盛りは過ぎたが、年老いてますます盛んな樹勢は立派である。
4月24日(木)
昨日浅川のお父さんに教えていただいたとおり、ジャガイモの種まき、ねぎの植え付け。かぼちゃ、トマトは次に来た時のお楽しみ。
お昼を『平山郁夫シルクロード美術館』となりのレストラン「亜絲花」でいただく。
品数豊富なランチは、さすが味にうるさい勝宏くんのおすすめ、まことに美味しかった。
この席でたまたまお隣同士になった原さんご夫婦とお知り合いになって、明日のオルガン美術館訪問につながるわけである。
午後の予定はゆっくりなので、八衛門湧水の先で北へ折れて、周りの別荘を見ながらゆっくり八ヶ岳高原ラインへ登ったのだが、別荘の家並みが途絶えるあたり、アスファルト道の真ん中になにやら立っている。
え!馬? いやあれは鹿だ。立派な雌ジカだ。
グランドキャニヨンでは立派な角の牡鹿に5メートル先で出会って感激したが、こちらは角こそ無いが引き締まった体躯のサラブレッドのような見事な雌ジカだ。
体高はわれわれの身長と変わらない、こんな大きな鹿を見るのは初めてだ。
あわててカメラを探している隙に、彼女は白いお尻をこちらに向けて樹林の中へ。
「八ヶ岳倶楽部」に寄る。
ギャラリーに入ると木工の貼り絵細工の展覧中。
ベニヤをミシンで切り貼りする絵なのだが、杢爺先輩のスクロールソーアートとも違って、こちらはカラフルで、メルヘンチックである。
初めて拝見する技法だが、この根気とこだわりには脱帽だ。
デッキの下の斜面にはカタクリの群落。真吾さんお手植え?
和子さんおススメの美景、清里高原を訪れる。
こちらのミズバショウは、盛りを過ぎてちょっとくたびれ加減。
今回の旅の目的のひとつ、清里高原ホテルに入る。
勝宏君が譲ってくれた泉郷無料宿泊券を利用して、高原の一夜をたのしもうというわけである。
晴れていれば、富士を始め雄大なパノラマが。
でも、霧の高原もすてたもんじゃない。
4月25日(金)
ほんと、日本人は富士山が大好きだ。
チラッと頭が見えただけで喚声を上げる。
数分でまた雲に隠れた。
雲に聳える、といえばこちらも捨てたもんじゃない。
甲斐駒には桜がよく似合う。
「三分一湧水」から小海線の線路をくぐり、信玄棒道を500メートルぐらい登ったあたり、別荘地の一角に『リードオルガン美術館』を訪ねる。
きのう「平山郁夫シルクロード美術館」となりのレストラン「亜絲花」で食事をした際お知り合いになった原さんご夫妻に迎えられてログハウスの館内を拝見する。
懐かしい、といおうか、めずらしいといおうか、一見して時の重みを感じさせるオルガンが十数台、思わず嘆声が出た。
1800年代から20世紀初頭に生まれた彼らが ヨーロッパのお城から、アメリカの教会から、どうやってここ甲斐の国の高原のログハウスへ、たどりついたか、ご夫妻がかわるがわる熱心に話してくださる歴史、運命。
その情熱のこもった口調に聞きほれる。
それぞれの個性的な音色を聞かせようと、ご主人が弾いてくださる賛美歌や民謡。
音楽の素養といって皆無のわれわれに、微妙な違いが解るはずもないが、ときに深くときに広く、おごそかに、かろやかに、見事な演奏にひきこまれる。
なによりも20個を超えるストップを使い分ける、そのからくりの見事さ、緻密さに感動する。
館長である奥さん手ずから淹れてくださった紅茶を、満ち足りた気持ちでいただく。
ほんとうに心慰む貴重な時間であった。
去年の秋、いつもとおる林の中に新築されてから気になっていた「Glove Cafe」で昼食。
石釜ピッツァを焼く見事な手さばきを見ながら頂くイタリアンは味も見事であった。
いいお店を見つけたね、と満腹。
満開の桜と雪山と。
のどかな甲斐の国をあとに家路につく。
本郷小学校の校庭、ちょっと失礼してシャッターを切る。
帰りがけの子供たちに女子先生が話しかけている。
「ねぇきみたち、みんなは見慣れてるけど、これはとてもすごい景色なのよ」
叔父さんたまらず振り返って声をかける
「ほんとだよ、日本一だよ」
にこにこ笑って無視された。
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