いつかあの頂へ

bufoの日記

霧の遠見尾根

 5月24日(土) 信濃


 年一恒例、同期の諸兄と山へ登る。
 今年の目標は後立山連峰 遠見尾根より五竜岳

 
 守山のとんがり家へ9時、二人中央高速に乗る。
他に知多の3人は東海環状から、ギネ先生は診察を終わってから追いかける手筈。


 お昼、穂高の『上条』で美味しい蕎麦とチカのてんぷら。
庭の花々が美しい。



 三人組車と合流して、オリンピック道路北へ。
4時、『白馬パークホテル』チェックイン。
温泉につかっているうちにギネ先生も到着。


 幹事カキデン、インバヤシ、イソテイ、ギネ、トンガリ、ブッフォ。
 無事6人が揃って美味しいワインで乾杯。
フランス料理、なかなかに美味である。
先生差し入れの『白鹿・千年寿』に酔っ払って爆睡、
夢は『五龍登頂』!




 5月25日(日)五龍遠見』


 てっきり雨、と覚悟していた天気も目が覚めると霧が登っている。
例によってゆっくりペースでホテル出発。 


 3分でついた駐車場はガラガラ。
 テレキャビンは目下運休中、幹事の骨折りで、特別われわれ6人の為に運転してくれることになっている。とにかくロープウェイもしくは同等の登攀設備が完備していること、というのが我等中期高齢者登山隊の必須条件になっている。
 テレキャビンの方こそいい迷惑であろうとは思うが、この際一同喜んで乗車する。
 

 今年の残雪は多いそうだがさすがにスキーリフトは止まったまま。
いよいよ雪の登攀が始まる。


 ところどころ現れる夏道を見失って藪こぎをする一幕もあったが、とにかく地蔵の頭着。
 一向に晴れない霧もなんのその、お地蔵さんに前途の無事を祈って上を目指す。

 見返り平へついて、みんなで見返りをすれども、一面の霧で何にも見えない。
一同あめをしゃぶりながら思案する。


 アイゼンこそ着けなかったが、ピッケルも使った、藪漕ぎもした、結構息も上がっている。
 せめて小遠見まで行こう、霧が晴れれば鹿島も拝めよう、という意見も無いではないが、このとき幹事の一言。
 「よし! 今日はここまで」
 山でリーダーの一言は絶対である。


 登りで見失った木道を下る。
雪融けを待って咲き出した高山植物がおじさんたちを慰めてくれる。



 いつもながら下りは早い。

 目指すは大町温泉郷


 名泉に疲れを癒し、温泉蕎麦に舌鼓を打って、来年のリベンジを誓い合って解散。


大町山岳博物館


 さて、トンガリ氏もbufoもともに急ぐ用も無い身ではある。
では、とそのまま大糸線を横切って、『山岳博物館』を目指す。


 初めて訪れる立派な建物。トンガリも驚いている。
中へ入ってまたびっくり。


 大町に山案内人が出現した時代から現代に至るもろもろの資料、標本が見事である。
数十本並んだピッケルは「山之内」、「門田」。
 我が愛器『守屋』を探したが残念、どうやら格が違うみたい。
いいさ、おれには『守屋』が一番の名器さ。
 
 山の岩石、植物、鳥、なかでも「雷鳥」の標本はさすがである。

残念ながら、3階のベランダから望めるはずの絶好のアルプスパノラマが、雲に霞んでいた。



木曽路


 この日記をお読みいただいたことのある方ならご存知であろう、bufoは高速より下道を走るのが好きである。


 トンガリ君が横で大イビキをかいているうちに、松本の街を過ぎて19号線にはいる。
 塩尻の手前で目が覚めてびっくりしているトンガリさんを催促して、目前の渋滞を避けて木曽路へ入る道を探す。松本空港へ出て、奈良井川の岸を南下する、いい道だ。
 河原に一面白い花。
「にせあかしあ

 

平沢


 平沢の集落に入る。


 bufoは昔、この平沢の漆屋さんへ箪笥の生地を納品に来たことがある。
その箪笥が総漆の仕上げをされて、今度は東京のさる金満家の別邸に納める為トラックで走って広尾のお屋敷へ、ちょいと覗いたお風呂はなんと15メートル、bufoの目にはプールとしか見えなかったっけ。

 そのNT漆店の玄関を見て懐かしかった。
トンガリさんは、集落のほとんどが漆器の看板がかかっているのにびっくりしている。


奈良井


 奈良井の宿に入ってまたびっくり。
両側に軒を連ねる建物がすべて古建築なのだ。


夕闇に黒い軒に灯がともり、なんとも宿場町の風情、
「これは馬篭よりすごいよ」とトンガリ氏。


 町をでかかった道で、後から来た男の人に声を掛ける。
「始めてお邪魔しましたが、素晴らしい街並みですね」
 男性、ニコニコ笑っている。
「これを守っていくってたいへんでしょうね」
「街並み指定されたからね、住人はちょっとね」
「また家族とお邪魔したいと思いますがいつごろがいいですか」
「8月12日のおまつりにおいでよ、いいよ」
この人、Hさんも漆器店のご主人、名刺を下さりながら、職人です、と名のられる。
われらとほぼ同年か、これから公民館へ剣道の修練に行くのだという。
「ほう、剣道の先生ですか・・・」
「いやぁ」
 にっこり笑い、手を上げて去った。



 車屋で蕎麦を食べようといっていたのが、すっかり日が暮れた。
19号線へ出て、最初の蕎麦屋へ飛び込む。
『ていしゃば』
 蕎麦屋には不似合いなこの屋号、躊躇しながら頼んだすんきそばは、なんと絶品であった。