いつかあの頂へ

bufoの日記

ピッケル磨いて穂高へ行こう

                       
 2日.3日と、西穂高岳へ行ってきた。 

 一年ぶりのらしい山行であったが、ロープウェイから西穂の小屋までは残雪を踏んでの快適な登り、ゆっくりペースで一時間半。
建て替えてずいぶんになるはずだが、気持ちのいい小屋である。


 7人の仲間が再会を祝して、ギネ院長が担ぎ上げたオタールという美酒で乾杯した。

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西穂山荘にて


 明けて無風快晴、日の出こそ明神の向こうだったが、遥かな富士は云うに及ばず八ツ、南、中、恵那山。


 優美とも形容すべきか、加賀の白山。

             

            photo 遥かに、白山


近くは笠、抜戸、双六の稜線。五年前の夏、ハンズの進藤先輩と黒部から釣り竿を担いで歩いた道。

さらに遡ること四十年前、黒山、矢入君らとキスの上にナベをのっけて縦走したルート。

           photo 西に笠、抜戸


 今日は残雪に輝いているが、あの日這松の匂いにむせながら寝っころがって見渡した穂高の尾根を、今かっての仲間たちと息も絶えだえに登っている。
   
 見返れば焼けの頂上直下に湯煙りのような可愛い噴煙が見える。
ずっと下に、小さくなってしまった大正池、ホテルのあざやかな赤い屋根。

いつか見た懐かしい風景だが、新緑の谷から視線を上げると
どっしりと、しかもやさしげに乗鞍がゆたかな裾野を広げている。

           photo 南に、焼、乗鞍



 小屋を後に登り始めて一時間少々。
さて、なん回目かの休憩を切り上げて、最後のワンピッチは岩場の登攀、
穂高らしさもちょっぴり味わおうよ。


 まだ八時半だが、この七人の侍、平均年齢ウン十ウン才、たれひとり先へ、上へと言い出す者がいない。
予定どうり、だったのかどうか、独標の頂上で写真を撮って、さっさと下りにかかる。



           photo 仲間たち 青空に笠が岳

向かって インバヤシ ギネ ゴネ インテツ トンガリ よっちゃん





 前を行く6人にシャッターをきりながら、時々後ろを振り向いては、前穂、奥穂のかなたの高みへ視線をやる。


   またいつか、あそこを歩こう。
   また何時の日か、あそこへ登れるだろうか。



         photo 西穂高稜線を望む






 ここで我が同志をご紹介しよう。
 

 まず自称健脚組。
 

カキデン

 今回の幹事 緻密な下調べのおかげで、全員無事帰還できた。
名工大教授 大学が株式会社になる前に退官できる幸せな先生。
またの名をインテツ{インド哲学者}とも呼ばれた60年安保の元闘士。
ウチにも女の子が増えてねぇ、とにこにこしている彼は昔と変わったのか、
 それともぜんぜん変わっていないのか。

ゴネ

 小柄な体で山、特に下り道をすっ飛ばす男 昨日もひとり一時間で小屋に着いた。
S自動車インド工場長を2年前退職。
E−アドレスを教えろといったら、呉れた名刺の肩書きに、
囲碁ふれあい浜松 ”ひまわり会”」 とあった。
 そのむかし、部室で碁盤を持ち出したら、彼にかなう者はいなかった。
 

インバヤシ

 一年生の夏山、雷鳥沢の武勇伝が我が山岳部愛唱歌の替え歌となって今に残る。

 インバヤシィーが・休憩を
       ハイデ〜ハイデ〜フライデハイ
  もらおぉーとしたとき
       ハイデ〜ハイデ〜フライデライ
  そっぽを向いてリーダーは・チィーラリと見ただけさ
  インバヤシィーは・死にたくなった
       ハイデ〜ハイデ〜フライデライ  



 残念なことにこの名歌を唄い継いで呉れる後輩たちはもういない。
栄枯盛衰世の習いとはいえ、かって50名になんなんとする部員がたむろしていたあの部室、
 わが山岳部は、もうどこにもない。

 歌の主人公は健在である。ただ肥満体に要注意である。
T自動車系某社社長を勤める。

トンガリ

 四日市コンビナート、中国某コンビナート等のプラント設計に従事
今 自分で作ったシェアウェアソフトで食べている幸せな男
かって、剣=白馬=針ノ木=薬師=槍=上高地 のいわゆる「全山縦走」を
「コウセン」を主食にやり遂げたVamiチームの名誉あるメンバー だった。



  次に自称慎重組

ギネ院長

 岩村城主の縁に連なる何とかのナントかである、と自分で云ったことはないが仲間はそう信じている。坊ちゃんである。えばらないが、えらいやっちゃなぁと仲間にそう思わせる雰囲気がある。そう思うのはオタールを飲んだ所為ばかりではない。


 脳外科の権威。大垣市民病院副院長をやめて開業2年になる。
ただでさえ爺々たちが集まればたちまち病気の話になるのだが、彼の専門的でしかもわかりやすいフォローのおかげで、皆心安らかになるのである。
                                   

ヨッちゃん

 学生時代からじんわり、やんわりと仕事を進めるタイプだった。
6年前雷鳥の登りが苦しそうだった。運動不足を嘆くセリフがふと洩れていた。
それがなんと、今日のこの足取りの安定感!
ゆったりと、まったく危なげがない、ではないか?!


 独標からの岩場のくだりで、ほとんど手を使わない。
雪の急坂で、二人が滑って転んでをやっているのに、ポケットに手をいれて 悠然と下っていく。


 この差は、彼の靴がゴローであるとゆうその理由ばかりではない。
ちょっと駄文が長くなったが、私が今回目を見張ったのがこの彼の変身である。
T自動車販売の激務を離れて以来この五年、なんとずっと登山をつづけてきたという。
  
 しかも単独行ばっか!ときたもんだ。帰りの電車で見せてくれた山行手帳には
「大晦日、滝谷出合を出発、槍を目指す」などとある。


 先日、野村董夫氏の「ヒマラヤ巡礼」の講演を聞き、退職後150日間でヒマラヤ縦走をやってのけたというエネルギーのすごさと、氏の穏やかなお人柄とのギャップに驚いたものだが、今日のヨッちゃんにも、またびっくりさせられたことであった。

Bufo

 ブッフォと読む。BUFO BURGALIS JAPONICA が正式名である。が、我ながらこのスペルは怪しい。いまやエイズの権威磯村リーダー、K市民病院長の小林さんや、小原さんら当時の医者の卵たちが、八方尾根の雪洞でホエブスで雪を溶かしながらよってたかって命名してくれた由緒ある名前なのだが、先輩たちは正しいspellを教えてくれなかった。


・このほか、同期のメンバーには、

イソテイ (某レザー会社専務)
ゲテ   (藤沢に楽隠居)
ダイキ  (OAシステムプラザ社長)
ポヤン  (静岡大学理学部教授)
 といったそうそうたる面々がいるが、各々所要あって残念ながら今回は参加できなかった。



さて、独標登頂に見事成功を収めた侍たちは、小屋のテラスで早々と弁当を平らげた後、じゃんけんで来年の幹事、トンガリ。攻撃目標を「八つ」ときめ、再会を約して小屋をあとにした。



健脚派は上高地を目指して駆け下りていった。帰宅後電話で聞くと、雪の下りで結構難渋したそうだ。3時間かかったという。坂巻温泉につかって帰った、との事である。



わが慎重派は(といっても別に他意はないので、上高地もいいがあの長い下りで膝が笑うかもしれん、ラッシュで車で待たされるかもしれん、と我が年齢を慮ってチョット先読みをしたというだけの話で)素直に来た道を下った。



ロープウェイ乗り換えの鍋平に露天風呂が出来ていた。
ここを素通りする手はない。


湯上りのビールで乾杯していい気持ちになったギネ院長が思い出した。
「そや 高山には武山君がいる!」
幸い私のアドレス帖に武さんの電話番号が控えてある。



 せっかくの日曜日に不意の客を迎える羽目になった武山夫妻にとってはとんだ災難だったかもしれないが、この面子で高山へきて武さんにご挨拶なしで帰ってしまってはかえって失礼というものだ。


 タクシーは病院とは反対の西の高台へ向かう。
観光地の運転手さんは親切である。

たずねあてた美しい建物の玄関に、武さんが手を振って迎えてくれた。



ここで事件が起きた。
「あ、ピッケルがない」と叫ぶでもなく喚くでもなくつぶやいたのはヨッチャンである。
駅で切符を買った時どっかへひょいと置いて、そのままタクシーに乗ったらしい。
 ビックリする皆に、「いいんです、大した物じゃないし、また買えばいい」などといっているが、どっかの名工に鍛えさせた業物で、ブレードに作者の銘とヨッチャンのネームを刻した愛用の逸品であることを、院長と私は知っていた。



 このとき鮮やかな動きで我々に少なからぬ感動を与えたのが、ほかならぬ武山夫人であった。
恐縮する三人を後目に、車を出すやもう駅へ向かって走り出していた。


 こうなると我々の役目は、テラスのテーブルに並んだビールで乾杯することしかない。


 このテラスから東のかた、武さんの指し示す先を見れば、高山の町並みの遥かかなたに、乗鞍の見事な山容が浮かんでいる。
そして目の前の瀟洒な建物の周りには、夫人の丹精こめたガーデニングの成果が三人の目を楽しませてくれる。

 

ここが、この建物が、いずれ 久美愛病院院長の重責から開放されるであろう武山夫妻の、より充実した人生への発進基地になるのだろう。



 ピッケルと共に帰ってきた夫人を交え、また話に花が咲いたことではあった。
 きけば愛嬢えなちゃん(幼いころ三人で我が家を尋ねてくれたことがある)は、ヨーロッパに、かの地で知合った彼と幸福な家庭を営むという。



 快適で、爽快なこの山行の最後のページは、我が友タケさんと、素晴らしい奥さんの心づくしの歓待で、いつまでも我々の記憶から消えることのない思い出の最終章を記すことが出来たのであった。




 今この文をしたためながら、二日間の情景の数々が鮮やかに目に浮かぶ。


  雲一つない空、
  黒々と聳える岩峰、
  夢のようにたなびく雪の稜線・・・・
  四十年前の自慢のピッケルをひっさげた愉快な仲間たち。


なかに、ピッケルバンドがなくてケイタイのストラップを括り付けたつわものもいる。


 伊達のピッケルとわらうなかれ、これぞ我らが青春と友情のシンボルなのだ。



  山よ

  友よ

   ありがとう 


   Auf Wiedersehn!




永遠に記憶から消えることのない山々、暁の八ヶ岳





Bufo
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